数年に1回のヨーロッパ出張、1年に4回東京開催のモーダ・イタリー、モード・イン・フランスでの仕入れの様子。
日本のお客さまに合うようにデザインや色の提案をして、デザイナーを驚かせるアイディアもあり、お互いの言葉がわからなくても持ち前のセンスと度胸で交流ができました。
また、日本の職人作りも大好きで、新潟・小千谷や片貝の伝統反物でオリジナルの礼服やドレス、スカートを製作したり、現代に匠の技を生かす「エリッツ」ボイルガーゼにほれこんでいました。
「エリッツ」ボイルガーゼのものづくりは『いちがいこき』(新潟弁)です。ほれこんだ、匠の技。
「きれーい」で「やさーしい」小千谷の反物。豪雪地帯の厳しい自然が作った職人の技です。
海外から生地を直輸入して、数々のオリジナル・デザインを生み出しました。世界で1点のみの装いづくり。時には縫製のプロに「このデザインは難しすぎて無理だ」と言われることもありましたが、「でも、試しに作ってみてください」とお願いすると、プロをも唸らせる美しい仕上がりになることもありました。
新潟が世界に誇る「小千谷縮」2009年ユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本の風土にあった優秀な生地です。
年に2回東京へ「カトリーヌ・アンドレ」の新作発表会へ行きました。色彩センスの美しさに感激でした。また、カトリーヌも「柄沢スミ」の独創的な色の合わせ方に感銘を受けました。
フランスのミョーにあるカトリーヌのアトリエも訪ねたことがあります。カトリーヌが東京へ来るときはお土産持参です。言葉が違っても、ファッションを愛するもの同士理解できるところがあります。
カトリーヌがお店を見たいとわざわざ新潟まで足を運んでくれました。カトリーヌファンの前で新作のデザインや着こなしを話してくれ、熱気に包まれました。2013年7月収録。
2015年1月収録。車椅子で東京の新作発表会へ。いつもは着ない上下黒づくめの装い。大好きなカトリーヌにお別れを言いに行ったのかもしれません。この年の4月に「柄沢スミ」は他界しました。
カトリーヌは「柄沢スミ」の訃報を受け、新作に「SUMI SAN」と名付け、想い出をデザインと色彩に込めました。万華鏡をイメージした、うつくしい贈り物となりました。
''心からの敬意を表して、このシリーズのお名前をいただいて「SUMISAN」と名付けました。マダムにもきっとご覧いただけると信じています・・・''
ー カトリーヌ・アンドレ
イタリアのデザイナー「パオロ・ビザーニ」との交流も長く続きました。「パオロ・ビザーニ」はイタリアでも屈指の職人。最高の生地がない限り仕事にはならない。そのために世界中の生地を探し「ベリッシモ」に仕上げるのが「お家芸」でした。
スタッフのヴァレーリオさんとは「柄沢スミ」オーダーが定番になり、新潟のご婦人に合うように様々な工夫をしてもらいました。2009年にはヴァレーリオさんがお店を訪ねてくれ、新潟市内の観光もご一緒しました。ヴァレーリオさんはマンジャーレ(食べること)が大好き。老舗料亭、ルレクチェの農家での舌鼓にモルト・ボーノ!と感激。「王様のように扱ってくれた」とヴァレーリオさん。
「パオロ・ビザーニ」の作品にうっとり。最高の生地と最高の手仕事がこの上ないうつくしいシルエットに。それでも「柄沢スミ」は「こうすればもっと」と腰の位置や丈の長さ、袖の幅まで細かく伝えます。ヴァレーリオさんは「ベーネ、ベーネ」といって「柄沢オリジナル」を「パオロ・ビザーニ」に伝えてくれます。不思議とこうしたちょっとした「お直し」で、より多くの女性が作品を手にとってくれるようになります。
食通のヴァレーリオさん。裏山で採ったものという乾燥ポルチーニ茸をよく持ってきてくれました。「これはね、まず、水に戻したら、フライパンを用意して、オリーブオイルを引き、ガーリック、オニオンを炒め・・・」と商売そっちのけでゼスチャー豊富にレシピを教えてくれるのでした。
パオロとヴァレーリオさんは日本の伝統文化や織物を愛しています。イタリアで行われた浮世絵の展覧会に行き「すばらしかった」と絵葉書を送ってきてくれたこともありました。
パオロ・ビザーニから直接仕入れているのでイタリアからこのような箱で「柄沢スミ・オーダー」ものが届きます。
いつも新潟のマンマにと、手紙とお菓子が入っています。
「アヴェ・カプリチェ」さんと。東京にて。
イタリア・ベネチア・アクセサリーの「アヴェ・カプリチェ」さんとも長いおつきあい。いつも「柄沢スミ」オーダーがかなりの数に上りました。「すらすら」と紙にデザインを描き「こういうの作って」とお願い。「アヴェ」も「Karasawaさんなら、もちろんですよ」。仲間をとても大切にするラテンの人らしい対応。オリジナルからいくつもの人気作品が生まれました。「アヴェ」からも「すばらしい感性の女性ね」とお褒めの言葉をいただきました。
スイスのサッカー生地やフランスのチュールレース。美しさに心奪われて次々と生地を手に入れました。それらをデザインして数々のオリジナルを製作。それを着て椅子に座っていると「あら、そのスカートすてきね」とお客さまから声がかかり、オーダーをいただきました。
最近では匠の素材、「ほんとうの職人技の生地」というものが流通しなくなったと言われています。
「こちらで作ってもらった服は今でも着てますよ」と最近でもお客様からお言葉をいただきます。素材が良いと着心地と使い心地が抜群で自然と体に馴染み、愛着がわき長く使っていただきます。